ウェクスラー成人知能検査(WAIS-Ⅲ)では、全く予想していなかったくらい、自分の得意なことと、不得意なことの差を、はっきりと感じました。

あまりの差の大きさに、動揺してしまったくらいです。

「検査結果は2週間後以降に、病院に聞きにきてくださいね」
と言われましたが、次回の予約は早くても、一カ月半先でないとお願いできない様子でした。

仕事をしている関係上、土曜日しか通院することができませんが、土曜日はすでに予約が埋まっていたのです。

大人の発達障害の診断ができる病院は数が少なく、予約もなかなか取れないのかもしれません。


予約を前倒しして病院へ


3-7-1


忌引き休暇も明け、再びコールセンターへ通勤するようになりました。

亡くなったおばあちゃんのことや、WAIS-Ⅲの結果が胸をよぎるたび、不安が込み上げてきました。お客さまと話していても、その不安を拭い去ることはできません。

私はだんだんと、WAIS-Ⅲの結果が待ちきれなくなってしまいました。

そこで、何とか平日に休みをもらい、早めに病院に行くことにしました。
私の基本的に、土日休みでしたが、コールセンターは土日も営業していたため、シフト調整は可能でした。

そして、予約を半月も前倒ししてもらい、私は病院に足を運びました。


発達障害の診断


「いやー、思っていたよりも、派手に結果が出まして」
ビジネスマン風の医師は、私の顔を見て、前置きしました。

「は?派手?」
前置きにしては、引っかかる言葉です。


「最初はあなたのことを、発達障害ではないと見立てていたけど、知能検査の結果を見る限り、そうは言い切れなくなってしまったんですよね……」

そう言って、医師が見せたのは、見事なまでに凸凹が激しい、折れ線グラフでした。


ヒマラヤ山脈とマリアナ海峡……かと、思ってしまいました。
それくらい、ガクン、ガクン、と、鋭角の激しい線を描いていたのです。


「いや、あなた、最初のときに、勉強もできて、長く勤めていると言っていたから、きっと発達障害はないと思っていたんです。
この結果からは信じられないけれど、仕事を辞めさせられていないってことは、おそらく戦力になっているんでしょうね……」

どこか遠くから聞こえてくる、医師の声。
私は、折れ線グラフから、目を離すことができません。


「……で、これから、どうすればいいんでしょうか?」

恐る恐る、聞いてみました。


「どうしようもないです。
発達障害は、一生治らないものですから」

医師の声が、強くはね返ってきました。


一生、という言葉を出されてしまうと、これ以上は何も言うことができません。


診断された日の帰り道


発達障害と診断された日。

病院から帰ったときの空模様を、今でもはっきり覚えています。

ちょっとでも針で突けば大雨が降り出しそうな、曇り空。

すぐに電車に乗る気にもなれなくて、気がつけば二駅分も歩いていました。

そのうち、ほつり、ほつり、と、水滴が頬を打ちつけたので、ぼんやりしたまま駅に向かいました。


(一生って治らないって、じゃあこれから、どうすればいいんだろう……)


混沌とした渦を抱え込んだまま、必死に助けを求めていました。

自分に発達障害があることを知ったまま、コールセンターで働き続けるのも嫌でした。
かと言って、辞めるにしても、今後どうすればいいかも分かりません。

それでも、大きすぎて見えなかったハードルがようやく見えてきて、気力がふつふつと湧き上がってきました。


一生治らないからといって、このまま一生を終わらせたくはありませんでした。


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※以下、補足です。

実はこの後、主治医が変更になりました。
ビジネスマン風の先生は、頭が切れて、物言いもはっきりしていたので、もし診断ということでなくて診てもらっていたなら、頼りになっていたかもしれません。
ところが、コールセンターの仕事で切羽つまった状態で診断してもらったので、余裕がなかったのです。(先生もそこまで言うか!ってくらい、ズバズバ言ってきましたし)
そんなことから、診断後はかなりダークになったのを覚えています。
その後、新しい主治医になって、ようやく診断結果を前向きにとらえられるようになりました。

主治医との相性って、やはりあると思います。
診断を受ける直前・直後は、当事者でないと分からないくらい、いろいろな感情が渦巻いているかと思いますが、もしどうしても担当医が信頼できないなら、セカンドオピニオンを探すなど、納得のいくまで答えを探すのもありかもしれません。

診断から一年以上たった今だから言えるのですが、診断名は医療や福祉サービスを受けるための羅針盤にすぎません。しかもその羅針盤は、必ずしもきっかりと正確な方向を示しているとは限らないのです。
(診断する先生によって、診断名が変わる場合もあります)
発達障害の特徴があるなら、それを受け入れた方が楽になると思いますが、かといって、診断名に縛られる必要は全くないと思います。

ちょっと長くなりましたが……
万一、これから診断を受ける方が、このページだけを見たら、不安になるかもしれないと思い、書き足しました。
診断を受けるって、ドキドキしますよね?
でも、たとえどんな診断名が付いたとしても(付かなかったとしても)、自分は自分のままでいいのだと思います。

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