おばあちゃんの告別式の翌日。

私は予定通り、知能検査を受けるために、病院に行きました。

瞼が腫れていないか心配でしたが、鏡で見る限りは目立っていません。
それでも身体のどこかに、お焼香の匂いが染みついているような気がしました。

私は小さな個室で、臨床心理士の女性の方と向かい合いました。


ウェクスラー成人知能検査


3-6-3


知能検査は、ウェクスラー成人知能検査第3版(略称:WAIS‐Ⅲ)と呼ばれるもの。

受けたことがある方は、ご存知かもしれませんが、何が得意で、何が不得意かが分かるような検査となっています。

(7つの言語性検査と7つの動作性検査の、計14種類の下位検査を行います。
キーワード検索してみれば、概要はわかるかと思います)


臨床心理士の方は、一定のリズムで、問題を読み上げていきました。

知識についての問題は、クイズみたいで、スラスラ答えることができました。

「電話を発明した人は、誰ですか?」
「グラハム・ベルです」

という風に。


ところが、数唱や算数の問題で、びっくりすることが起きました。

たとえば、臨床心理士の方が、
「132355」と読み上げた数字を、
私が聞いて、数字を逆にして答えるという問題があったのですけど、
「553231」という答えが、なかなか思い浮かばないのです。

数字の桁が増えれば増えるほど、だんだん頭が混乱し、しまいには声がつまってしまいました。


それから、算数の文章問題を、臨床心理士の方が読み上げたときは、さらにパニック。
問題が耳を素通りしていきました。

何度も、何度も、臨床心理士の方に、問題文を繰り返し読んでもらえるようお願いしました。
なのに、どれだけ聞いても、問題が理解できません。

私は、冷や汗でびっしょりになりました。


ウェクスラー成人知能検査は、この他にも、絵を見て間違い探しをしたり、パズルを解いたり、さまざまな検査があります。

得意なものは澱みなくできて、不得意なものはお手上げ状態で、ここまで落差があるとは思っていませんでした。検査結果を聞く前から、自分がどんなに凸凹の差が激しいか、まざまざと見せつけられてしまったようです。

葬儀を終えたばかりで、疲れていたというのもあるかもしれません。
それにしても、差が大きすぎます。


WAIS‐Ⅲを終えて


WAIS‐Ⅲが全て終わったあと、お礼を言って個室を退出しようとする私に、臨床心理士の方は言いました。

「コールセンターで働いているなんて、大変ですね……」

それは、蔑む言葉でなく、労わりの言葉でした。
数字を扱うコールセンターで働いているというのに、数唱や算数があまりにもできなくて、慌てふためいていた私を、気遣ってくださったのでしょう。


病院を出てからは、

(やばい!)

(やばい!!)

(どうしよう!!!)

と、心のなかで叫んでいました。


耳から入ってくる言葉を、こんなに覚えられないのに、まだまだコールセンターで働かなきゃいけないの!?

この検査で、自分がどうして電話の仕事でつまづいてしまうのか、ようやくはっきりと自覚しました。

忌引きでしばらくは休んでいたけれど、この土曜日を終えて、明日の日曜を終えたら、再びコールセンターに行かなければなりません。

このときほど、出社拒否したくなったときは、ありません。



※ グラハム・ベルや、132355はたとえです。
この問題が、WAIS-Ⅲでそのままそっくり出題されるとは限らないので、お間違いないようにくださいね~

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